あと10日

再来週、在学中ずっと続けていた仕事を辞める。
大学へ入学する半年ほど前、当時20歳の私は学校に通いやすくデスクワークだから疲れないという安易な理由で今の会社でアルバイトを始めた。

当時オフィスに興味は全く無く、社員に言われるがままにDTPオペレーションをし、終わったら早歩きで大学へ通う毎日であった。
社風が自由すぎる家族の様な職場環境。
チャチャっとエクセルやパワーポイントをいじるだけで生活に困らない収入が得られ、あくまでお金を稼ぐ場所と位置付けてこれといってオフィスそのものを勉強する事も殆どなかった。だが大学入学直前、突然総務部から通達があり、学籍を置くと社則に反するらしく4月の頭にそのアルバイトを辞めなければならず、入学の前日会社のお花見を最後に送別会を開いてもらい、退職した。

それから1ヵ月後電話が入り、やっぱり大学へ行ってても良いとの事で外部スタッフという妥協策で復帰し、それ以来何度か違う事をやろうと仕事を探していた時期もあったが、結局10日後まで四年間続けていた。
辞める理由は1月の就職活動中、内定が決まり次第内定先で卒業までアルバイトをする予定を伝えていて、それに合わせて私の後釜の求人をはじめており、その採用が決まった二日後に私が大学院進学に切替えて卒業まで居たいと伝えるのが遅れ、辞めざるを得なくなってしまったからである。100%私のヘマである。

外部スタッフでフルタイム・内勤という微妙な立場でデザイナーの補助を続け、次第にデザイナーはもちろん事業長や営業や商品開発からもイレギュラーな依頼が入り、これまでレイアウトからCG、販促資料、データベース管理、AutocadLisp・VBAの拡張、実務で使用する有用な海外ソフトウェアの講習やイントラマニュアルの作成、新事業やオフィスデザインのコンセプトメイキング段階でのアシスタント、オフィスデザインカラースキームの設定、エントランスデザイン、社内営業成績表のデザイン、新卒社員の研修内容・資料作成、VBAマクロで全自動化した依頼書と給与計算書、複数の部署のテクニカルサポートなど、外部スタッフとしてやらせてもらえそうな仕事を見つけては必要なスキルを休日中に身に付け、広くまんべんなくを基本に様々な業務にあたっていた。

昨年の夏にJFMAに訪問して以来、オフィスプログラミングやファシリティマネジメントに興味を持ち、お金の為から自分の為にスイッチが切り替わり、頼まれごとを処理する仕事に加えて、自分で考える仕事も任されるようになり、現在最後の大仕事に取組んでいる。
大学院受験用に溜めた関連ある研究論文をサマリーにまとめ、新たなデザインソフトやソリューションへ応用できないかどうかを検討したり、このブログにも中途半端なまま残っている人間の五感覚を刺激する提案資料の作成など、やりたい事が仕事になるというのは本当に幸せであると、あと少ししか居る事が出来ないが今更ながら強く思う。

学生時代ずっといた今の職場最後の仕事は実にシンプル。
「クリエイティブオフィスの可能性を探る」である。
目的はクリエイティブオフィスの多角的なアプローチ方法の提示と、オフィスを固定資産ではなく流動資産として計上し、如何にしてファシリティコストを削減するのかが誰にでも理解できるようなモノを作るというものだ。

「誰にでも理解できる」

これは実に奥が深いし難しい。
単純な事を政治家の様にややこしく難しく言う事は知識だけあれば簡単な事なのだが、複雑なものを「誰にでも」解るよう一般名詞に置き換えて説明する事はそう易々といかない。
それにはまず本人が深くその知識の発展と応用まで理解している事と、受け売りでは無く「自分」という翻訳機を通して一連の「流れ」を再構築・組み立てる必要がある。
というわけでここ数週間、オフィス学会誌や私物のFMやオフィスの専門書を持込んだり、雑誌やウェブ、更に飛躍してビジネス情報誌や海外のブログで日本型オフィスに言及している記事など、集められる情報は全部集めて付箋を貼りまくってアーカイブしていた。

当初は既にあるクリエイティブオフィスの説明やコスト削減についてまとめられたデータを貼り付けておしまいとする予定が、そもそもSECIモデルが提唱された背景に世界では、どういった経済や技術革新などに変化があったのかを、雑誌のタイトルや時代を象徴するブームになったものから「企業と人材に関わりがありそうなもの」を抽出し、何故野中氏のSECIモデルがこれ程までに重用されるかその理由を加え、知識創造スパイラルは単純な循環型モデルでは無く、アーカイブ化されたナレッジは共有され、次なる”異なる次元の”暗黙知の発生要因として、螺旋状に常に上昇する軌道を描く立体的なモデルで無ければならないなどと、調子に乗って自分の見解もちょこちょこ加えた。現時点ですでに30枚を超える規模の大きい資料に変貌した。

ワークプレイスの専門家を目指す学生にとって、「仕事が楽しい」という事を学生のうちから身をもって体験できるというのは貴重な時間である。
給料が良いとか同僚とウマが合う、或いはBGMが流れて紅茶やお菓子も自由、或いはケータリング制でお昼タダ・・・などなど、それはそれであったら嬉しく、特にワーカー同士の場の空気というのは仕事を進めていく上でとても大事な事ではあるが、純粋に自分がしている事にそういった「オプション」を除いても楽しいかどうか、それが重要に思う。

デスクは私の後任が使用しているので現在はミーティングスペースを改造して臨時タスクエリアとして開発の人達とシェアして黙々と仕事をしている。大きなミーティングテーブルにラップトップと資料を拡げて仕事が捗り、尚且つペリメータゾーンなので日中を除いて太陽光がほどよく辺り非常に快適である。(ポカポカして眠くなるが)

何はともあれあと10日でこの素敵な環境は終焉を迎える。
3年後、5年後と長期的な目標を決める事は重要だ。

しかし、その日その瞬間一秒一秒を考える事はもっと重要である。
理由は”今”にはリアリティがあり責任があるから。
何かとシンクロしている感覚が得られるのは未来でなく”今”だからだ。

今月末に志望する研究室のゼミに参加させてもらえる事になった。
今日も元気だタバコがうまい。

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