「オフィスの夢」を読む

今月頭に新世代オフィス研究センターから、オフィスの夢―集合知:100人が語る新世代のオフィスが発売された。
他の日記で何度も書いていた通り、私は現在金欠状態が続いている事と、他のKM・WPモノの本が溜まっていたので購入が遅れたが、実家に帰省中大型書店で目にかかり、購入。

目次はこちらを。

約300ページのボリュームで、オフィスのプロは勿論のこと、経営者、研究者、建築家、学生、FMrなどなどあらゆる職を持つ人達約100人が、NEOが用意した課題に答え、それをテキストマイニング手法を利用して集合知として「新世代オフィスとはなんぞや」の回答を出すという大がかりなプロジェクトブックである。

その課題内容は冒頭「NEOの冒険」の章に書かれている。
それは自分が実現したい新世代オフィスのイメージ、自分の立場から客観的にみた新世代オフィスのあるべき姿、その二つの間にある差を埋めるアプローチをそれぞれ漢字一字で表現し、説明するというものである。

なぜ集合知という文責の無い手段を選択したかについては、多摩大学の紺野登氏が「オフィス、ワークプレイス、集合知 -なぜ集合知が問題になるのか-」でわかりやすく解説している。
私としては、その次章「なぜ、漢字一文字か -単純化には、複雑と創造が求められる-」の冒頭で、明治大学の小笠原泰氏の説明がなるほどと思った。

以下、一部抜粋

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「新世代オフィスとは」を定義するという試みは、過去にも多くありました。しかし、この「新世代オフィスとは」という答えのない目標に向かった多くの試みは、成功したとはいえないのではないかと思います。
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つまり、「新世代オフィスとは何かを問う」という視座からは、「新世代オフィスとは」を見出すことは難しいということであり、われわれは、視座を切り替える必要があるのではないかと思います。
その視座とは、「「新世代オフィスとは何か」をどのように問うかを問う」ということです。

新世代オフィスとはなんぞやを定義する事が最終目標にあるとして、過去行われてきた試みでは客観的に全体論的にまとめられた事は無い。だから一つレイヤーを落として定義する為の具を定義する。その具が集合知が最も適している。と、いういうことだと思う。

そして小笠原氏自身の経験から、2時間の講演と15分の講演を行うのでは、どちらが難しいかを持ち出し、ポイントを集約させて無駄をそぎ落としたものを抽出させるために漢字一字という制約を与えたと書いている。

解説以降、作る人、導く人、経営する人、語る人、探究する人、提供する人、使う人というカテゴリーで分けられ、参加者1人あたり見開き1ページでどんどん紹介されていく。
私が面白いor他に無いなと思ったのは執筆陣のバラエティである。
Astrid Klein氏や内田繁氏、そして菊竹清訓氏など、建築やインテリア方面の学生であれば誰でも知っているデザイナーや、沖塩荘一郎氏や中津元次氏などFMといったらまず出てきそうな業界の著名人、家具メーカーやコンサルの経営者、出版社の編集者、オフィスを研究する大学院生etc…と、あるお題に対して色んな人が語るという流れ自体は過去に似たようなものを読んだ事はあったが、ここまで社会的なヒエラルキを排除して異種混合を貫いたフラットな本は珍しい。

唯一気になった事は、いくつかの人が課題要件である「漢字一字」ではない普通の文章で書かれていたり、テーマにたいする答えになっていない記事があった点である。
何か別のところからコピペしたのか、それとも編集が間に合わなかったのか理由は定かでは無いが、それぞれの執筆者の言いたいことが凝縮された一字を選んだというセンスそのものが、この本の魅力でもあると思うので少し残念であった。

それと参加者の中で約8名が外国籍で、英文で書かれているが、英語圏の人にとって漢字一字に相当するものは、アルファベット一文字ではなく単語一語になるので、見比べてみると英単語と漢字一字の持つ深みはやはり歴然の差であった。
漢字が持つ情緒や表現力をこの本の編集方法がより際立たせている結果となり、日本の文学や伝統芸能などの芸術文化がリッチなのは言語の影響が大きいのだと再確認。

まだ全員分の意見を読み終えていないが、この本は単なる”みんなのオフィスに対するご意見本”ではなく、その意見を単語を一単位として共起分析したプロジェクトブックなので、後半は50ページに渡り詳細に分析結果が掲載されている”まとめ”の部分が充実している。
なので読む順番をはじめに→第二部→第一部として敢えて結果を先に読んだ方が、この本を理解するという点では良いのかもしれない。

そしてとあとがきの後にオマケとして新世代オフィスCONCORDANCEという資料がついている。
私にとってはこれがなんとも嬉しい付録である。
ここでは各執筆者が作成した文章に出てきた単語と単語にある共起を個別にわけて、ユニークなものとメジャーなものに抜粋されたチャンク(意味を持つ前のコトバの塊のようなもの)を掲載しているのだが、これがある単語とある単語の関係を語る上で卒業設計に激しく役立つ。

オフィスについて書かれた本は、殆どがレイアウト手法や歴史など基礎の勉強材料としての趣が多いなか、本書「オフィスの夢」のコンテンツは珍しい。対象とする読者層は執筆陣のバラエティと同じく幅広いと思うので、オフィスに関心がある人は一度書店で立読みをお勧めしたい。

4 Replies to “「オフィスの夢」を読む”

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