Diploma design-4

本日卒業制作の中間発表が行われた。
で、私は諸事情により休んでしまった。
説明すると長くなってしまうので、とりあえず私が通っている学校では中間発表をする意味がイマイチ納得いかないので、さほど気にはしてはいない。

それに併せて作っていたテーマ発表資料第一弾が大体まとまってきたので、evernoteに溜まっていたメモをこちらに少し紹介したい。
仮プロジェクト名は「東京監獄化計画」

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Prologue [Sense of stagnation]

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たとえ周囲にたくさん人がいたとしても、それらは「他人」である

自分を含め、地方から上京した人の多くは閉塞感を隠し持ちながら暮らしている。
時間も空間も拘束されている訳では無いのに、どこか囚われの身の様な閉塞感。

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懲役刑に課せられた受刑者と、大学に入る以前の私の一日の一般的なタイムラインを比較する。
これを見ると点呼と自由時間に制限がある以外、一般人も囚人もさほど大きな変化が無い事がわかる。

私が感じている閉塞感は、単に都市部の特徴である「住まいが狭い」、「人が多い」とかでは無く、もっと内面に迫る日本人特有の根源的なモノゴトであると確信している。
しかし、閉塞感という極めて抽象的な個人感覚に加え、なるべくそれを感じさせまいと隠しているのだから解明する事はきっと簡単な事ではない。地方出身者である私自身の個人体験から、この閉塞感が生まれる根拠を分析し、解決へと導く事が本計画の目的である。

S1 [Definition of Modern people]

1-1 現代人の定義

  • 大学入学or 就職から上京した地方出身者
  • 20 ~ 30 代の若年層
  • 独身で経済的な余裕が無い

ここでいう現代人とは、所謂「オノボリサン」である。
東京の人口の約半数は地方出身者で占められている。
他にも膨大な数の外国人労働者や留学生で溢れ、本当の東京出身者を「江戸っ子」と呼べば、東京人とはオノボリサンの事といっても差し支えないだろう。地元というある種のコモディティから離れ、まだ見ぬ大きな希望を胸に大都会に足を踏み入れた、一人で生きる事を強制された人々である

1-2 彼らは東京を憧憬する

  • 新たな人間関係の構築
  • 競争社会にプレーヤーとして参加
  • あらゆるリソースが一極集中する地で自己実現etc…

吉幾三の楽曲「俺ら東京さ行ぐだ」の歌詞では、地元への失望感東京への想像上の期待が描かれている。
彼らは様々なモノゴトを犠牲にする対価として、上記にある様なメリットを享受しに上京するのである。
だからといって当然ながら思い様にいくとは限らない。
「今更地元へ帰れない」、「自分と同年齢の人があんなに活躍している」etc….
そういった不安や、想像とのギャップを日々抱き続けている。
つまり、私の閉塞感の正体は、これらのメリットとリアルから生まれる齟齬であるといえる。

S2 [Unlimited freedom]

東京の夜景は残業でできている。

人と東京の間にある、開きすぎた距離がその事実を隠し、「あぁ美しい」と感動してしまう人もいる

選択する自由の獲得と、選択できない重圧の発生

  1. かつて生き方テンプレートの様なものが存在し、それ従って努力をすれば相応の見返りが得られた
  2. IT が社会構造まで関わり出し、グローバル化という名の西洋文化が日本人の価値観まで入り込んだ
  3. それにより古い慣習は崩壊し、広義な意味での「自由」は確かにもたらされた
  4. 得られた自由により、過去に存在しなかったタスクが個人に課せられた
  5. 選択肢が増え、自由度が増したはずが逆にそれがプレッシャーとなり、都会に為の住むためのルールになっている
  6. ヒトモノカネが高速で流れ、それらが人とのつながりをも合理化させ「自分とその他大勢」という構図になる
  7. 砂漠の中を一人歩いている様な孤独感、自分がいてもいなくても社会は回っているという疎外意識
  8. 地元にあった「周囲を把握している」という安心した感覚が都市部ではスケールオーバーしてしまい、可視化できない不安が常につきまとう
  9. 壁で覆われた刑務所は、小さな社会が出来上がっている。
    それをヒントに都市を壁で分断し、そこを「自分にとっての東京」とし、「自分と都市」の間にある距離を縮める

その昔、やるべき事・価値観のベクトル疑いなく共有され、画一化していた

少なくとも私が幼少期の15 年以上前以前は、生き方にテンプレートの様なものが存在していた。
親や教師の言う事を聞き、与えられたタスクをこなせば( テンプレートに従えば) 約束された将来が獲得できた。
言われた通りにしていればそれ相応の成果が得られる、当然と呼べる社会であったといえる。
しかし時代は変わり、IT が道具では無く人間の奥深くまで関わりだし、ソーシャルメディアは人との関わり方を大きく変えた。
グローバル化がもたらした事は、人や情報の往来の活発だけでは無く、西洋の価値観がデファクトスタンダードとして日本人の在り方さえも変えようとしている。

選択しない事が罪となる現代社会

学歴や家柄など、その人が纏う符号自身の価値は次第に減少し、生き方テンプレートが消失しようとしている現代とこれから。

昔は考える必要性が無かった「自分がやりたいこと」。
それを定義出来なければ夢の無い若者だと、今とは違う時代を生きてきた大人から失望視される社会。

サービス経済化に伴い知識創造が企業経営では重要視され、ナレッジワーカーは仕事をする以前にそもそもその仕事自体をゼロから自らが考え出さねばならない、そういう時代になろうとしている。 毎日がプレゼンテーションの様な、アウトプットする文化が根付いている米国に比べ、我々日本人はブレインストーミングや創造する事に元来慣れていない、カスタマイズ文化である。

他者との自発的なコミュニティの成立を促そうと意図された建築はことごとく失敗し、広場を作ったとしても人が集まるわけではなく、むやみにオープン化、シェアをしても、自らすすんで他者と関わろうと個人が思わない限り、虚を作り出すだけである。
あらゆるものが共有され、情報はブロードバンドで高速に流れ、個人がみることが出来る世界・視野は限りなく広くなった。
地元で把握できていたはずの自分と他者との距離感覚、スケール感覚が、東京では巨大過ぎてその間をコンピュータが仮想現実として紡いでいるように見える。

ならばその大きすぎて実態が見えない「都市」を監獄の様に壁で分割し、自分にとっての「都市」がその囲われた中で起きている事だとスケールダウンをすれば、地元と同じ様な身の丈にあった小さな東京が各個人間で形成され、巨大すぎる都市を小さく見せる事でこの閉塞感から解放できるのではないだろうか?

開いてダメなら閉じてみよう

S3 [The modern ramparts city: Tokyo]

都市の監獄化
合理的判断に基づいたモビリティや、機会だけ設けられた他者との「つながり」の場が、目に見えない圧迫感を生んでいる
大まかに壁で覆ってできる小さな東京が、ヒトと都市との距離を縮め、最適化された「つながり」を再構築する

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Rem Koolhaas は「Exodus, or The Voluntary Prisoners of Architecture」の中で監獄を「囲まれた自由空間」と表現した。

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監獄はその中でライフサイクルが完結している小さな都市である。
平安京の様に「自分の街」と「それ以外」といった感覚が、実体無き都市を確実に把握する事が出来る。

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外部からの攻撃を防ぐための壁ではない。
高さを一様にする必要は無く、低くすれば動線を制御し、高くすれば新しい道も作る事が出来る。

イタリアのペルージャは、城壁によって都市の形態に「うねり」が付加された。
水道や城門は現在でも使われ、過去により現在の共同体が成り立っているといえる。

クロアチアの都市国家Dubrovnik。
ここは「自由都市国家」と呼ばれ、閉じた事で自由を獲得した稀有な例である。画像参考link

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敷地候補地:

  • 人形町~茅場町間or 下北沢駅周辺

Keyword:

  • 地元感覚が得られる他人社会が形成されてる
  • 定義した現代人が多く住む高層ビル群と低層住宅地の間
  • 学校や自治体施設等、あらゆるプログラムが均一に分散している

Concept:

都市を分断する。
密度が低い場所には壁を設け( 橙色点線)、壁と路が交差する場にはゲート( 赤紫線) を設ける。
地名で分けられていた街は、異なるルールでリアルに分断される。
自分が住む都市のスケールは極端に小さくなり、自治意識が働き、都市を「理解可能」にする。
幼少期から過ごしてゆっくりと形成された、「全体を把握しているという安心感」を壁とゲートによって都市を分断する事で創りだす。
それには壁で囲って閉塞感から抜け出すという矛盾した操作でなければ、ヒト・モノ・カネの流通スピードをゆるめることはできない。

参考文献

  • 日本の刑務所 菊田 幸一 岩波書店 2002
  • 犯罪心理学入門 福島 章 中央公論新社 1982
  • 元刑務官が明かす東京拘置所のすべて 坂本 敏夫 日本文芸社 2006
  • 監獄の誕生―監視と処罰 Michel Foucault 新潮社 1977
  • S M L XL Rem Koolhaas Monacelli 1998

参考論文

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とりあえず現時点でこの流れで行こうとしている。
最初は建築としての刑務所に固執していたが、一般人では知ることが出来ない囲いを内側を外から推測して作っていく事が危険に感じた事と、「刑務所の中だけではなく都市部では何ものかに拘束されたような感覚をもちながら東京で暮らしてるんだよ」という事の発端を、刑務所では消化仕切れないと判断して、箱よりも箱を受け入れる土台に関心が向いたので大分変更が加えられた。
今見返してみると、自分の根暗っぽさが出て「何をそんなに卑屈になるの」と思っちゃうほどネガティブな切り口に終始している。
そして掘り下げがやはりまだ浅すぎる。
きっかけとそのきっかけの正体をWHYWHYWHYWHYで繰り返して徹底的に洗い出して、じっくり形態への操作に取りかかろう。

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